拠点長あいさつ

2013年末に西アフリカで発生したエボラ出血熱は、ギニア、シエラレオネ、リベリアに感染が拡大し、2014年8月、世界保健機関(WHO)は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。感染の拡大を阻止するために、先進諸国による大規模な人的、財政的支援の結果、2016年に流行は終息しました。この時の流行では、28,000人以上の感染確定者と11,000人を超える死亡者を見ました。 2015年5月には、MERS(中東呼吸器症候群)が韓国で発生したほか、2016年には中南米を中心にジカ熱が流行し、感染症が国際社会に大きな脅威を与えています。グローバル化が進む現代においてはこれらの新興・再興感染症がいつ我が国に侵入してもおかしくありません。

特に病原性が極めて高く、有効なワクチンや治療法が確立されていないエボラ出血熱、ラッサ熱等の1類感染症の診断及びその病原体の取り扱いは最高度の安全(BSL-4)実験施設で行うことが国際的に定められています。科学技術先進国である我が国は、感染症研究において世界をリードする立場にあり、BSL-4病原体・感染症研究においても卓越した研究成果を上げることが国際社会から期待されています。しかしながら、国内に研究・人材育成を目的としたBSL-4施設が設置されていないため、研究者は海外のBSL-4施設で訓練を受け、その研究機関との共同研究として、病原体の自然宿主の同定、病原性の分子基盤の解明、診断・治療法の開発などを進めてきました。日本は未だ、このようにBSL-4施設で実施する研究や人材育成を他国に依存しなければならない、科学先進国として恥ずかしい状況にあります。

BSL-4施設は、現在、世界23カ国、52カ所以上に設置されており、米、英と独国では40年以上にわたり、安全に稼働し、病原体の研究、ワクチン開発などが行われています。しかし、感染症制圧に向けた国際的な取組みがこのように進められているにもかかわらず、エボラ出血熱の発生・流行が度々起こっています。世界各国がより緊密に連携して感染症対策に取り組み、基礎・応用研究と人材育成を強化する必要があります。

このような背景の下で、我が国は、国家プロジェクトとして、日本はもとより、世界の感染症を克服するために、その病原体の研究と人材育成を担う拠点とその中核となるBSL-4施設を支援することを決定しました。長崎大学感染症共同研究拠点は、この国家プロジェクトを推進するために創設されました。長崎市、長崎県ならびに地域住民の皆様の信頼と協力を得て、BSL-4施設を稼働させ、長崎、日本と世界の安全・安心に寄与する、全日本感染症共同研究拠点として機能することを目指しています。

長崎大学感染症共同研究拠点 拠点長 喜田 宏


主な役職

    ・日本学士院会員

    ・北海道大学ユニバーシティプロフェッサー

    ・北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター特別招聘教授 統括

    ・OIE 世界鳥インフルエンザレファレンスラボラトリー長

    ・WHO 指定人獣共通感染症対策研究協力センター長

喜田 宏 拠点長