重症熱性血小板減少症候群ウイルス (SFTSV)の感染を阻害する 既存薬の同定

 国立大学法人長崎大学感染症共同研究拠点の浦田秀造准教授らは、経口止瀉薬として使用されている「ロペラミド」と高血圧薬「ニフェジピン」が、マダニが媒介する感染症として知られる重症熱性血小板減少症候群 (SFTS)の原因ウイルスであるSFTSウイルスの感染に対して、抗ウイルス効果を示すことを明らかにしました。

 本研究は2021年5月10日に国際学術誌「Viruses」に掲載されました。


【URL】

https://www.mdpi.com/1999-4915/13/5/869


【概要】

 SFTSは2011年に中国で初めて報告されたSFTSウイルスに感染することで発症するダニ媒介性の感染症です。SFTSウイルスに感染すると6日から2週間の潜伏期を経て、発熱、下痢を含む消化器症状 (嘔吐・腹痛など)が多くの症例で認められ、その他、頭痛・筋肉痛・皮下出血や下血などの出血症状などを起こします。

 現在では、中国のみならず、日本を含む東アジア・東南アジア地域においてSFTSウイルスが常在していることが明らかになっています。日本においては2013年の初報告以降、毎年40~100人の感染者が報告されており、長崎県でもこれまでに40人の感染者が出ています。死亡率は30%程度で、有効な予防法・治療法はこれまでに確立されていません。

 私たちは、本研究において経口止瀉薬 (下痢止め薬)であるロペラミドがSFTSウイルス感染を抑制することを示しました。この抗ウイルス効果は細胞内へのカルシウム流入を阻害することで発揮されることも明らかとしました。更に、高血圧薬として知られ、ロペラミド同様に細胞内へのカルシウム流入を阻害するニフェジピンもSFTSウイルス感染を抑制することを示しました。ロペラミドはSARS-CoV-2の感染を抑制することも報告されており、また、カルシウムの細胞内への流入は他のウイルスの増殖にも関与することが知られています。このことにより、ロペラミドはSFTSウイルスを含む多くのウイルスに対する抗ウイルス薬候補として、さらなる研究を進める価値があると考えています。


【本研究のトピックス】

・ロペラミドが、複数の培養細胞でSFTSウイルスの感染を抑制しました。

・ロペラミドは、細胞内へのカルシウム流入阻害を通して抗ウイルス効果を発揮しました。

・細胞内へのカルシウム流入阻害を示す高血圧薬ニフェジピンもSFTSウイルスの感染を抑制しました。


【論文タイトルと著者】

タイトル

 Loperamide inhibits replication of Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome Virus 


著者

 浦田秀造 (長崎大学感染症共同研究拠点/熱帯医学研究所 准教授)

 安田二朗 (長崎大学感染症共同研究拠点/熱帯医学研究所 教授)

 岩崎正治 (大阪大学微生物病研究所 特任准教授)


掲載誌

 Viruses

 Vol.13 (5), 869-880 

【本リリースに関するお問い合わせ先】


長崎大学感染症共同研究拠点/熱帯医学研究所 浦田秀造


TEL:095-819-7970


Mail:shuzourata@nagasaki-u.ac.jp