• 3-1. BSL-4施設で取り扱う病原体とはどのようなものですか?

     WHO(世界保健機関)の基準に従って各国がBSL-4施設で取り扱う病原体を決めています。基本的には、ワクチンや治療薬がなく、感染した場合に致死率の高い感染症の病原体で、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルスなどが含まれます。
  • 3-2. BSL-4施設で研究対象とするウイルスについてより詳細に教えてほしい。

     BSL-4施設において研究対象として使用予定であるウイルスは、エボラウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスなど感染症法で特定一種病原体等(いわゆる「BSL-4ウイルス」)に分類される病原体です。
     なお、ウイルスの変異や新しいウイルスの発見による研究内容の変更を懸念する声も聞かれますが、長崎大学としては、そうした場合には、WHOや感染症法に基づく規制に従うのみならず、厳格な学内手続を経るとともに、地域住民に情報を公開し、理解を得ながら進めることとしています。
  • 3-3. BSL-4施設で取り扱う病原体の拡散の危険性は、どの程度なのですか?

     この施設で使用が予定されている病原体は、主に接触感染や節足動物媒介性感染により伝播するものであり、すべて空気感染しないウイルスです。
     また、この施設では極微量のウイルスのみを取り扱う予定であり、多重のHEPAフィルターで清浄化した排気や排液の高温滅菌処理など多重の安全対策をとります。
     さらにこの施設で使用予定の病原体は、外気中では短時間で死滅してしまう脆弱なものであることから、排気、排水などを介して、BSL-4施設から拡散して感染を起こす可能性はありません。
  • 3-4. 施設ができたらウイルスの棲息地になるのではないですか?

     ウイルスが施設外に漏出することがないよう、施設内でウイルスを厳重に保管します。実験室内では、実験を実施するために必要最小限の量のウイルスのみを保管し実験に供することから、取り扱うウイルスの量を考慮して定量的に評価すれば、施設外に漏出する可能性は科学的な根拠に基づいて現実的にはないと言えます。
     万が一、BSL-4施設外に出ても、病原体の媒介動物がいない施設周辺で、ウイルスが生息する環境になることはありません。また、ウイルスは水道水、洗剤、アルコール除菌液、熱、乾燥、酸、アルカリなどで壊れます。したがって、「ウイルスの棲息地になる」ということは起こり得ません。
  • 3-5. BSL-4施設で取り扱うウイルスについて、取り扱い方やその量を示してほしい。

     病原体は培養液や緩衝液などの液体中に含まれた状態で保管・利用され、数ミリリットルから数十ミリリットルの溶液として取り扱われます。大きなタンクで取り扱うようなことはありません。
     したがって、取り扱う量は、消毒薬などで速やかに感染性をなくすことができる程度の量であり、広範囲に拡散するような事態に至ることはありません。
  • 3-6. 長崎大学の説明にある「空気感染するウイルスは扱わない。」というのはどこで決まったのですか?

     感染症法で、BSL-4施設で取り扱う病原体に空気感染するものは含まれておらず、長崎大学としては、空気感染するウイルスをBSL-4施設で扱う予定はありません。
      ただし、将来的に新規病原体の出現などにより空気感染するものが追加された場合には、①大学に安全対策に万全な体制が整っている、②感染症法に基づく厚労大臣の指定を受ける、といった条件を満たすときに限り、空気感染する病原体を扱った研究に取り組むことも想定されますが、その際には、地域住民の皆様に報告いたします。
  • 3-7. BSL-4施設で扱うウイルスが、変異によって空気感染する性質を持つことはないのですか?

     エボラウイルスのようなBSL-4施設で扱うウイルスが自然界で空気感染するように変異する可能性は科学的根拠に基づけば極めて低いです。現在の科学技術では、人為的に空気感染するウイルスを作り出すことはできません。将来的に可能になっても国の厳しい監視下で研究者は勝手に作ることはできません。
  • 3-8. BSL-4施設ができれば、テロの脅威から天然痘ウイルスを使った研究を始めたくなるのではないのですか?

     天然痘については、国際的にその所持が制限されており、我が国における病原体保持に関する規制を行う感染症法においては、天然痘の所持は認められておりませんし、長崎大学のBSL-4施設において炭疽菌や天然痘ウイルスを用いた研究を行う考えはありません。
  • 3-9. BSL-4施設の設置に関する決まりはありますか?

     各国は、WHO(世界保健機関)のマニュアルを参考に、それぞれの国で法律や基準を整備し、施設を建設しています。日本では、病原体管理を目的とした「感染症法」(厚生労働省所管)の病原体管理規制や組換え遺伝子の拡散防止を目的とした「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(文部科学省等所管)に一部、設置に関する規制があり、それらの基準を満たさなければなりません。
  • 3-10.BSL-4施設の運用には、特別なルールがあるのでしょうか?

     WHO(世界保健機関)のマニュアルを参考にして、各国が自国の実情に応じ、ルールを決めて運用しています。日本では、「感染症法」(厚生労働省所管)の病原体管理規制において、BSL-4施設に相当する、一種病原体等を取り扱う施設の基準が定められています。
  • 3-11. 長崎大学にBSL-4施設が設置された場合は、どのように運用されるのですか?

     国内での関連法規に従うことはもちろん、さらに国の指導、県・市、また住民の皆様との十分な連携の下、所要のマニュアルを作成し、それに従って運用します。また、施設の運用にあたっては、透明性を確保するために、学外の方にもご参加いただける仕組みをつくりたいと考えています。
  • 3-12. 「壊れやすい」病原体に、なぜ「厳重」な施設設備・体制が必要なのですか?

     長崎大学が施設で使用する予定のある病原体は、直に接触しなければ感染せず、人や動物の体外にある状態では壊れやすいものです。しかし、ひとたび実験者に感染した場合には、重篤な症状を引き起こすとともに、感染源となって周囲の人々に感染させるリスクがあります。
     よって、万が一の事態が起こったとしても、病原体が施設からの漏出や、作業者が感染することがないよう、厳重な安全対策を行う必要があるのです。
  • 3-13. BSL-4施設そのものが生物災害の発生源となる危険性があるのではないですか? そのように考える理由は、原因の特定に時間を要すること、不顕性感染による感染拡大や二次、三次、次世代への感染の可能性があること、突然変異により研究者の手に負えなくなることが挙げられる。

     BSL-4施設は、何重もの安全対策が施されており、現在稼働している諸外国のBSL-4施設では、施設外への病原体の漏出排出事故や施設周辺における人・動物への感染事例はこれまで1件も発生していません。
     長崎大学のBSL-4施設で取扱う病原体は限定されており、それが原因となる感染症が発生した場合にはすぐに特定できます。
     病原体がBSL-4施設から漏えいすることがないように何重もの安全対策をたてており、その可能性はほとんどないと考えていますが、万が一の事態により、病原体が施設外漏えいしたとしても、周辺環境に自然宿主となるような動物がいないので病原体が長期間環境中に維持されることはありません。
     病原体がどのような変異を起こしても、施設外に出て来易くなるように変わることはありませんが、万が一、予期しない変異が起きたとしても、施設からの漏えいを阻止できる構造の施設を建設し、研究を行う際には、環境中に漏えいしないよう厳密な管理を徹底します。
  • 3-14. 実験中にウイルスが外に出てしまう心配はないのでしょうか?

     BSL-4施設は、建物の中に、密閉された実験室を設置する構造をとります。実験室は外部より低い気圧に保たれ、実験室内の空気が直接、室外に流れ出ない設計になっています。実験室内の空気は、二重の高性能( HEPA)フィルターで微細な粒子まで取り除いた後に外部に排気されます。BSL-4施設は世界では1960年代から利用が始まっており、現在では24カ国・59施設以上で設置されていますが、実験中に病原体が建物の外に出て感染者が発生したという事故は1例もありません。
  • 3-15. ウイルスが排水などに混じって外に出てしまう心配はないのでしょうか?

     BSL-4施設では、実験室区域からの廃水は全て、まず消毒薬で処理し、その後、20分以上121℃に加熱して滅菌することとされています。この処理により、廃水にウイルスが含まれていたとしても完全に不活化(死滅)させることができます。
  • 3-16. 排気処理装置に装着されるHEPAフィルターでは、ウイルスの漏洩を完全に防げないのではないのですか?

     BSL-4施設は、HEPAフィルターの信頼性だけに頼っているのではなく、陰圧制御を含む「構造・システム」で、ウイルスの漏出を防ぎます。

    ①そもそもウイルスは、「安全キャビネット」内部やBSL-4施設内の実験室の中を浮遊しているわけではありません。
     実験の際、ウイルスは培養液や緩衝液などの液体中に含まれた状態で容器内にあり、さらに、容器を開封する作業は「安全キャビネット」と呼ばれる実験設備の中で行われます。そもそも取り扱いのミス等がなければ、このキャビネット内部にウイルスが浮遊している状態にはなりません。
    この「安全キャビネット」は空気がキャビネットの内側に向かって流れる構造になっており、キャビネット内の空気はすべてHEPAフィルターを通して室外に排出され、さらに室外に設置された多層のHEPAフィルターを通して外部に排出されます。
    実験室の中もウイルスが浮遊している状況になることは現実には考えられません。

    ②万が一、実験室内に漏出したとしても、陰圧制御とHEPAフィルターにより、BSL-4施設からのウイルスの漏出は現実には考えられません。
     実験室の出入り口は陰圧制御されており(つまり実験室外の方が気圧が高く、実験室外に空気が流れにくい)、また、実験室の排気ダクトには捕捉率99.97%のHEPAフィルターが二重に設置されているため、実験室外にウイルスが漏出する危険性は現実には考えられません。
    さらに、BSL-4施設の内外においても、陰圧制御がなされており、BSL-4施設外への漏出を防いでいます。

    ③WHOによるHEPAフィルターの能力の評価その他
     HEPAフィルターの能力に関しては、WHOは、“LaboratoryBiosafetyManual(実験室バイオセーフティ指針)”2004年第3版のP51に、「HEPAフィルターは、直径0.3μmの粒子は99.97%、直径0.3μmより大きいか、より小さいサイズの粒子を99.99%捕捉する。これは事実上、HEPAフィルターがすべての既知の病原体を効果的に捕捉することを可能にし、無菌の空気だけがキャビネットから放出されることを保証する。」と記載しています。
     世界で初めてBSL-4施設が稼働して以来約50年、ウイルスの外部への漏出事例が全く報告されていないのは偶然ではなく、こうした技術や工夫・努力によって達成されていると考えられます。

  • 3-17. 厚生労働省令やWHOの指針では、BSL-4施設の排気は施設内に再循環されない構造とすることが定められているが、これは、排気が実験室内の人間にとって危険だからではないのですか?

     感染症法施行規則では、排気の再循環に関する規定とともに、二重以上にしたHEPAフィルターの設置などの規定を設けており、厚生労働省からは、こうした規定全体により、病原体を取り扱う施設内外での汚染等を制御するものであるとの回答がありました。
  • 3-18. ウイルスが実験者に付着して外に出てしまうことはないのでしょうか?

     実験者が外部に出る際には、実験用のスーツ(陽圧防護服)を着たまま、3分間、全身に消毒薬のシャワーを浴びます。この段階で、仮にウイルスがスーツに付着していても不活化(死滅)させることができます。また、実験用スーツは洗浄され、施設内で保管されます。
  • 3-19. 実験用のスーツ(陽圧防護服)の下に着ていた実験着はどう処理するのですか?

     実験用のスーツ(陽圧防護服)の下に着ていた実験着もすべてBSL-4施設内で高圧蒸気滅菌処理(121℃2.0気圧の蒸気で20~30分間)をした後、施設内で保管します。
  • 3-20. 実験者がウイルスに感染する危険はないのでしょうか?

     実験時には、実験者は実験用のスーツ(陽圧防護服)を着用し、空気もスーツ内に外部から供給されるため、実験室内の空気と完全に遮断されています。このため、ウイルスに感染する危険性はありません。ただし、実験者が実験中に注射針等を自分に刺してしまったり、実験用のスーツが破損した場合には感染の可能性が生じます。しかし、その場合には、すぐに分かりますので、第一種感染症患者を収容できる施設へ移して対処します。これまでに、海外のBSL-4施設で針刺し事故等が起きたことはありますが、実験者から他の人へ感染した事例(二次感染)はありません。
  • 3-21. BSL-4施設で、実験や作業中に従事者が感染の可能性が疑われた場合、その対応を教えて下さい。

     実験作業者が実験中に感染したことが疑われる場合には、一類感染症患者を収容できる施設に直ちに隔離して検査します(感染していないことが確定するまで実験作業者は隔離されます)。第一種感染症指定医療機関である長崎大学病院には、現在、一類感染症患者に対応できる病床が2床(2室)あります。また、感染症法関連の法規にそって、長崎大学独自のマニュアルを作成し、日頃から一類感染症患者が搬送されてきた場合などに備えた訓練等を実施します。
  • 3-22. それでもウイルスが外に出たらどうなるのですか?

     ウイルスは、その遺伝子がタンパク質の殻で包まれた、大きさ数十から数百nm(1ナノメーターは1ミリメーターの100万分の1)の微粒子で、特定の生物の生きた細胞の中でしか増えることができません。また、化学物質や放射性物質のように環境中に残留や蓄積することはなく、特にBSL-4で扱うウイルスは水道水、洗剤、熱、乾燥などにより簡単に壊れてしまいます。
  • 3-23. BSL-4施設の自然災害に対する備えはどのようになるのですか?

     様々な自然災害を想定して、計画を策定しています。

    ①地震:現在計画中のBSL-4施設は、震度7に達する大地震が発生しても国土交通省が示す施設の耐震性能において「構造体の補修をすることなく建築物を使用できる」水準としています。併せて、免震構造を採用することで実験機器等の転倒防止をする計画としております。

    ②津波:設置予定地の海抜は約30mであり、長崎県での想定最大津波は4mであることから、施設への直接的な被害はないと考えられます。

    ③豪雨:長崎は豪雨による大水害を経験したことから、浸水対策は十分に行い、重要な施設は地下を避け、地上階に設置することを計画しています。

    ④台風:施設の窓硝子等の暴風雨対策は十分に行い、内部には影響がないようにします。

    ⑤火山:懸念されるのは雲仙岳による被害ですが、距離を考慮すると直接の被害はないものと考えられております。

    上記以外にも、電力の供給停止を想定して、非常用発電機の設置等の対策を行います。

  • 3-24. 日本は地震国ですが、地震に対する備えについてはどのように考えていますか?

     長崎県防災会議資料(長崎県地域防災計画平成25年6月修正)によると、長崎市内では、雲仙地溝南縁東部断層帯と西部断層帯が連動する地震の場合に、震度が最大6強になると予想されています。また内閣府の中央防災会議が発表した南海トラフ巨大地震の被害想定によると、長崎県の最大震度は5強と想定されています。日本が地震国であることを考えると、こうした想定を踏まえて、震度7に備えた免震構造の設計を行っています。
  • 3-25. 地震による建物の亀裂の有無と実験動物の逃走防止はどうようになるのですか?

     現在計画中のBSL-4施設は、震度7に達する大地震が発生しても国土交通省が示す「病原菌類を取り扱う施設」の耐震性能において「構造体の補修をすることなく建築物を使用できる」水準としており、動物が逃げ出すほどの亀裂が入ることは無いと考えています。また、そもそも実験室出入り口とその外側の間は複数の部屋を通って行く必要があり、部屋の前後の扉は同時に開かない構造になっていますので、動物の逃走は何重もの扉で防止されています。
     万が一、動物実験室内で実験動物が飼育されているケージ(飼育かご)から逃走した場合は、動物実験室に閉じ込めた上で捕獲します。
    したがって、実験動物が逃走することは現実にはないと考えています。
  • 3-26. 耐震強度の根拠は誰が決めるのですか?

     建物の構造設計については、国が定めた建築基準法などの法令等に基づいて、長崎大学が責任を持って実施し、厚生労働省から、BSL-4ウイルスを取り扱える施設としての施設審査、基準を満たしているかの確認を受けることになります。
     長崎地方において想定されている最大震度は6強ですが、地域の安全を考慮し、世界最高水準の安全性を確保する観点から大学の判断で耐性強度を震度7としました。
  • 3-27. 東日本大震災では津波により大きな被害が生じました。長崎でも、津波の危険性を検討する必要はないでしょうか?

     内閣府の中央防災会議の発表によると、南海トラフ巨大地震が発生した場合には、長崎県でも津波の高さが4mに達すると想定されています。施設設置に際しては、津波による周辺の被害なども考慮したうえで、より安全性の高い施設計画としています。
  • 3-28. 長崎では、台風や大雨による災害が頻繁に発生しますが、BSL-4施設では、どのような安全策を考えていますか?

     長崎では台風や大雨に対する対策が重要だと考えています。過去、長崎市内の最大瞬間風速は54.3m/Sでしたが、より高い安全性を確保すべく暴風対策を十分に考慮した施設にすべきであると考えています。一方、長崎市周辺の過去の最大降雨量は、1982年長崎豪雨時の1時間187mm、3時間377mmが記録されており(内閣府の中央防災会議発表)、地下階等の浸水対策が必要です。対応策として、重要な施設は地上階に設置することが必要です。なお、台風や大雨等が事前に予想される場合には、即座に実験の中止等を含めた安全確保のための対策を講じます。
  • 3-29. 自然災害などによる停電に備えて、非常用電源を用意すべきだと思うのですがいかがでしょうか?

     自然災害などによる停電に備えて、BSL-4施設には非常用電源を置く必要があります。特に長崎は水害の可能性があるところですので、重要な施設は地上階に設置しなければならないと考えています。
     また、非常用電源は施設全体の電力を3日間維持できるものを、1台が故障しても稼働できるよう2台以上設置する予定です。
  • 3-30. 非常用電源が使用できず、すべての電源が停止した際でも、BSL-4施設の安全性は保たれるのでしょうか?

     実験室は密閉構造であり、ドアは完全気密性を備えた設計です。たとえ全電源が喪失された場合でも、内部の空気が外に出ることはありません。
     通常、病原体は少量を常に-80℃以下で凍結保存し、実験を行う際に培養(病原体を増やす操作)を適正な温度下にて行いますが、仮に全電源喪失が生じた場合には、保管庫および培養器の温度を適正に保てなくなり、病原体は不活化(死滅)してしまいます。
  • 3-31. 電源ケーブルの損傷などのために非常用発電機も機能しない場合の対策は取られるのですか?

     非常用発電機は、必要な電源ケーブルを含めて、免震エリア内に設置するよう計画しており、地震による非常用発電機などの設備の損傷は防げるものと考えています。その上で、電源喪失の事態においても、病原体を外部に漏出させることの無いよう、病原体の封じ込めに重要な設備については、電力以外の方法で対応を図れるよう対策を講じる予定です。
  • 3-32. 災害が発生した時の緊急退避ではパニックできちんとした手順を踏まないこともあるのではないですか?

     避難訓練緊急事態対応の訓練を、定期的に行うことで退避者がパニック状態になることを回避します。また、BSL-4実験室内での実験は最低でも二人一組で行い、相互に協力して退避します。緊急時の対応は、感染研や各国BSL-4施設のマニュアルを参考にし、今後具体的に検討しますが、研究者自身及び周辺環境の安全が最大限確保される対応をとります。
  • 3-33. BSL-4施設で扱われる病原体は、どのようにして運ばれるのですか?

     現在、WHO(世界保健機関)のマニュアルにおいてリスクグループ4に分類される病原体は国内には存在しませんので、国外のBSL-4施設から輸入することになります。その際、国際連合の規格に適合した気密容器を用いて、相手国及び我が国の法令を順守して輸送されます。なお、「感染症法」(厚生労働省所管)の病原体管理規制では、エボラウイルスやラッサウイルス等を一種病原体等に指定し、国内の輸送方法については公安委員会への届出を義務付けるなど、厳しい基準を設けています。
  • 3-34.(1)病原体等を運搬するプロセスとはどのようなものですか?(2)どのような手続きや対策で安全性が確保されるのですか?

     

    (1)病原体等を運搬するプロセス
     BSL-4施設で扱う特定一種病原体などの運搬は感染症法で規定されており、詳細は厚生労働省による「特定病原体等の安全運搬マニュアル」に記載されています。そのマニュアルによれば、特定病原体の中の一種病原体等から三種病原体等の運搬については、都道府県公安委員会への届出、運搬証明書の交付を経て実施されます。

    (2)安全性の確保について
     以下のような対策により安全の確保が図られます。

    ①運送容器について
     病原体は強固な防漏性を有する一次容器、防漏性かつ気密性の高い国連規格による二次容器、輸送時の衝撃を保護する三次容器を用いて三重に包装します。

    ②運搬従事者について
     運搬車列それぞれについて運行責任者が定められ、運転者、見張人、知識を有する同行者の役割が定められます。

    ③運搬体制について
     運搬中に移動、転倒、転落等が起きないように積載車両に積み付けられ、積載車両および伴走車両により車列を組み、運搬します。交通事故や盗取等が生じた場合には、都道府県公安委員会から指示を受け、必要な措置を講じます。非常時に備えて、病原体に関する知識を有する人間の同行や消毒・滅菌剤の携帯が義務付けられています。

    ④訓練やシミュレーション
     一種病原体等の運搬については、今後、適宜シミュレーションや訓練を実施することで、万全の対応が出来るように準備します。

  • 3-35. 実験に使用するウイルスが盗まれたり、奪われたりする心配はないのでしょうか?

     本施設には事前に登録・承認された者以外は立ち入れない規則とし、実験室への入室に当たっては生体認証やカード認証などを用います。また、必ず複数の研究者が同時に作業を行う(監視しあう)ようにすると同時に、実験中も含めて、常に管理室からビデオカメラ等で室内を監視するようにします。また、不審者などに備えて大学独自の警備体制を構築するほか警察等にも協力を求めます。
  • 3-36. 『テロが発生しないように予防策を多重に措置する』といった説明で、住民のテロへの不安が解消するとでもいうのですか?

     テロが発生しないように、教職員の人物審査、施設の監視警備の厳重な実施、ウイルスの厳格な管理、堅牢な施設の構造などの予防策を講じます。万が一テロが発生してしまった場合には、関係閣僚会議において基本的な方針が定められているとおり、国と連携して対応します。
    (参考)
     政府における取り組み
  • 3-37. 人物審査はどのように行うのか。実験室等への入室検査については、どのような検査機器を考えていますか?

     諸外国のBSL-4施設を参考に検討しており、警察当局も含め関係省庁などとも協議して審査項目基準の作成を進めます。X線手荷物検査装置や生体認証など具体的なシステムについては、ご指摘を踏まえつつ、基本構想及び設計の中で設置を検討します。
  • 3-38. メンテナンス時の業者に対する厳密な確認は行うのですか?

     メンテナンス業者にも施設職員と同様の事前審査を行います。メンテナンス業者が実験室に入室する際は、施設管理者が同行するとともに、室内監視カメラにより監視します。
    なお、メンテナンス期間は、すべての実験を中止し、メンテナンス業者が病原体にアクセスできないようにします。
  • 3-39.BSL-4施設への入退室管理はどのようになされますか?

     BSL-4施設への入退室は厳重に管理されます。施設はカードや暗証番号、あるいは生体認識などの複数の認証システム、監視カメラ、入退室記録システムを備え、許可された者以外は入ることができません。
  • 3-40. 利用者の「予定滞在時間」の申告とともに、予定時間が過ぎた場合の在室確認も含め滞在管理もされるのですか?

     具体的なマニュアルは現在検討中ですが、BSL-4実験室で実験を行う前には、あらかじめ実験内容及び予定滞在時間を確認します。実験室内での行動は、常時監視し、入室から退室まで全てカメラで記録します。
    また、施設内の滞在も全利用者の施設入退室を記録し、予定時間を超える滞在については事前申請を義務付ける予定です。
  • 3-41. どんなに備えてもヒューマンエラーはあり得るのではないのですか?

     現在国内ではBSL-4施設が稼動していないこともあり、今後、海外施設におけるヒューマンエラー防止対策の最新情報を常に確認しながら、万全の対策を講じる予定です。
  • 3-42. ヒューマンエラーをなくすことは、本質的に不可能ではないのですか?

     常時2名以上の入室、連続実験時間の制限など、ヒューマンエラーの予防措置に万全を期すとともに、万一、起こった場合にも、甚大な被害が発生しないように、十全な防止策を講じることが重要です。国としても、ヒューマンエラーなど人為的なミスによる事故を防止するために有効な情報を収集し、関係者との情報共有に努めます。
  • 3-43.BSL-4施設は50年以上危険な病原体の漏出事故の事例はないとのことであるが、施設内での事故、また、BSL-4以外の病原体の漏出事故についても説明してほしい。

     

    ①BSL-4施設に関連した例
     これまでに、6件の研究者による針刺し事故(イギリス、旧ソ連(2例)、アメリカ、ロシア、ドイツ)、2件の病原体を含む検体が通常とは異なるルートで搬出された事例、および1件のBSL-4施設稼動前の検体の保管方法の不備が報告されています。
    いずれの場合も、病原体の外部への漏洩や研究者以外への感染が生じる事態には至っておりません。

    ②BSL-4施設以外に関連する例
     冷戦下の旧ソ連において、BSL-3相当の細菌兵器工場で培養された炭疽菌(BSL-3病原体)がフィルターの装着忘れが原因で施設外に漏出し、地域住民が亡くなった事例が、度々事故例として取り上げられます。現在の施設では、フィルターの不具合等を検知する仕組みの導入等が進められており、同様の事故は起こりえないと考えられます。また、炭疽菌は熱や乾燥に最も強い細菌の一つですが、BSL-4施設で取り扱われるウイルスは自然環境下で簡単に不活化されてしまう病原体です。

     その他の事例で、施設外に病原体が漏出し地域に被害を及ぼしたものは報告されていません。
    これらの事例を教訓として、リスクはゼロではないという考え方に立ち、様々な事故の可能性を想定して対応策を講じることとしております。

  • 3-44. 海外では病原体の不適切な管理もおきているが、これは大学にとって重要な事故ではないのですか?

     病原体の不適切な管理も、問題事例であると考えており、重要なトラブルであると考えています。
  • 3-45. 長崎大学がまとめたBSL-4施設で起こった事故等の一覧には、ロシアで起こった事故などの記載漏れがあるのではないのですか?

     いただいたご指摘を裏付ける根拠は、見つかりませんでした。なお、ロシアの事例は、BSL-4施設での事故ではありません。
  • 3-46. 長崎大学では針刺し事故や不適切管理は年間でどの程度起こっているのですか?

     長崎大学熱帯医学研究所の実験施設(BSL-2、BSL-3施設での感染実験を含む)では過去数年間の針刺し事故例はありません。また、大学病院では年間60-80例程の針刺し事故報告があります。
    不適切管理に関しては、安全管理上の問題はないものの、その記録の保存方法等に関して改善を要する事例もありました。
  • 3-47. 海外のBSL-4施設における安全確保対策について説明してほしい。

     長崎大学としては、今後BSL-4施設の整備を進めるに当たっては、テロ対策を含む安全確保対策について、油断することなく万全を期したいと考えております。
    したがって、様々なルートを使って、海外のBSL-4施設における状況を調査しておりますが、長崎大学で資料を入手した米国の事例とともに、海外のBSL-4施設利用経験のある日本人研究者を対象として平成27年2月に実施した調査の概要をお示しします。
     今後も引き続き情報収集に努めその成果を活かすとともに、国、県、市などの関係行政機関との連携も図っていきたいと考えております。

    (1)施設の警備その他の例
    ①警備
     ·施設の外部および内部の両方に監視カメラを設置。(24時間モニタリング)
     ·玄関口に警備室を設置。
     ·警備スタッフの巡回。
     ·IDカードなどによる認証システムの設置。
    ②警察、消防などとの連携体制の構築
    ③訓練
    ·不測の事態を想定して、全てのスタッフを対象に定期的に訓練を実施。

    (2)研究者の身元調査・トレーニング

    ①身元調査
    身元調査の実施、犯罪履歴の確認等

    ②トレーニング
    長期間のトレーニングにより研究者の適正を判断。

  • 3-48. BSL-4施設のインターネットに対する情報セキュリティ対策はどのように考えているのですか?

     BSL-4施設内のネットワークは、建物内で閉鎖した隔離ネットワークとして、施設外のインターネットと物理的に遮断します。また、隔離ネットワークで利用する機器は、サイバーセキュリティ対策を実施して運用する予定です。また、携帯電話等の持ち込みも禁止する等の対応マニュアル(仮称)を検討します。
  • 3-49. BSL-4施設を建設した場合、長崎大学では動物実験はおこなう計画ですか?

     診断方法や治療方法を開発するためには、実験動物に対する感染実験が必要になります。マウス・モルモット・サルなどの中小実験動物を用いた感染実験を想定しています。
  • 3-50. 動物実験指針はすでに長崎大学にあるようですが、BSL-4施設における新たな動物実験指針を作るつもりはあるのですか?

     動物実験に関する安全対策などについては、BSL-4施設が設置された場合には、既存の規則を基に、安全管理規則や標準作業手順書を追加で作成する予定です。
  • 3-51.国立感染症研究所においては、なぜSFTSの研究をBSL-4施設で実施しているのですか?

     国立感染症研究所においては、サルの実験を行うことができるBSL-3実験室がないため、サルの実験が可能なBSL-4実験室で実施したとのことです。また、安全性をより高めて実験を行うことも理由のひとつです。
  • 3-52. ウイルスに感染した実験動物が逃げ出す心配はないのでしょうか?

     実験室は完全密閉構造になっており、飼育室の扉にはネズミ返しと呼ばれる動物逃亡防止柵が取り付けられていますので、万が一、飼育室内で動物が個別のゲージから逃げても別の部屋に逃亡することはありません。さらに、実験室区域の入り口から飼育室に進むには複数の部屋を通って行く必要があり、部屋の前後の扉は同時に開かない構造になっていますので動物の逃亡は何重ものシステムで防止策がとられています。
  • 3-53. SFTSの媒介動物であるマダニのような小さな生き物も使うのですか?

     海外のBSL-4施設ではマダニを使った実験を行っているところもありますが、長崎大学のBSL-4施設ではマダニを用いた実験を行うことは想定していません。