• 7-1. 万一の危険性がある施設との共存共生を住民に迫るのは不合理ではないですか?

     大学としては、国の支援を得つつ、安全の確保のための対策に万全を期します。万一の事故災害等が発生した場合には、甚大な被害が発生しないように、十全な防止措置を引き続き検討していきます。
  • 7-2. 一人でも多くの方に説明を聞いていただき意見、疑問を受け、答えていくことが必要であり、公開説明会等を繰り返し実施していくべきではないのですか?

     透明性を確保し積極的な情報公開や地域との双方向のコミュニケーションを推進し、理解を得ることが重要だと認識しています。
     今後、説明会等を開催する際には、必要に応じ、文科省等の担当者にも参加してもらい、情報発信と理解促進に努めます。
    (参考)
     地域連絡協議会
     住民説明会等
  • 7-3. BSL-4施設の建物の基本構造などについて、いつ、どのような形で情報開示されるのですか?

     施設の仕様は、基本構想ならびに今後建物の設計が行われた際に、その進捗にあわせて、適宜、施設のセキュリティに関する情報を除き、公開可能な情報について提示していく予定です。
    (参考)
     長崎大学BSL-4施設基本構想
  • 7-4. 国立感染症研究所における地域住民との共生に向けた取り組み状況を教えてほしい。

     国立感染症研究所の見学会には、希望者全員に参加していただいており、また、BSL-4施設としての指定後、セキュリティをより強固にするための工事を実施しているとのことです。長崎大学における安全対策については、国立感染症研究所の対策等を参考にして、地域住民の方々からのご意見を聞きつつ、今後、検討していきたいと思っています。
  • 7-5. BSL-4施設は、地元経済などにどのような効果を与えると考えていますか?

     これまでに視察した欧州のBSL-4施設では、地域の教育の活性化などに貢献している様子がうかがえました。長崎大学としても、施設設置により、これまで以上に感染症研究が活性化して、国際的なシンポジウムの開催をはじめ内外の研究者の交流が活発化するのではないかと期待しています。もちろん、研究成果を含め、地域の科学教育にも大きな貢献ができると考えています。
  • 7-6. 国際的な感染症研究拠点として、国内外からの人材を含む研究資源が長崎に集約されることにより、長崎の活性化につながるとのことであったが、どのような事例が想定されるのですか?

     長崎にBSL-4施設が設置されることは、長崎が日本および世界の感染症研究拠点の一つになることを意味し、ここでの診断方法やワクチン・治療薬の開発などの成果が世界に発信されることにより、研究都市としての長崎市の知名度が上昇し、企業誘致や来訪者の増加、それらを通じた雇用の維持・創出にもつながると考えられます。
  • 7-7. BSL-4施設近隣の地価が暴落したということはないのですか?

     一例として、東京都武蔵村山市の国立感染症研究所・村山庁舎周辺の地価の変動率を見ると、BSL-4施設竣工後も同市内の他地域と同様であり、BSL-4施設設置に伴う影響は見受けられません。   さらに、2014年秋のエボラ出血熱の疑いのある患者検体の搬入後も、地価の推移に変動はありません。
     長崎大学としては、BSL-4施設の設置計画の進捗状況を公開し、地域住民を始めとする関係者のご不安やご懸念の解消を最大限に図ることで、地価の下落といった事態の防止に努めたいと考えています。
  • 7-8. (1)海外のBSL-4施設が市街地に多く設置されているとのことですが、どのような経緯で、どのように住民との合意形成に至ったのですか。(2)海外のBSL-4施設での住民との合意形成過程における失敗事例から学ぶことはないですか。

     ある学術雑誌に掲載された論文より、カナダ国立微生物学研究所と米国テキサス大学医学部ガルベストン校の二箇所のBSL-4施設に関する合意形成事例をお示しするとともに、合意形成に支障が生じ設置が見送られたカナダのオンタリオ州立衛生試験所の事例をご紹介します。
    この論文においては、この三つの事例を踏まえ、「信頼」や「情報開示」が重要であると指摘されており、長崎大学としてもこれらの点を重視して参りたいと考えております。

    (注)「必要性」
     この論文においては、「信頼」や「情報開示」に加え、「必要性」も合意形成における重要な要素としています。
     カナダ国立微生物学研究所のケースにおいては、それまでカナダが頼っていた米国疾病予防管理センター(CDC)の業務が過重になり、引き続き依存することが困難になりつつあったこと、米国テキサス大学医学部ガルベストン校のケースにおいては、ガルベストンがメキシコ湾沿いの重要な港であること、地域社会にとって脅威となり得る病原体に研究の焦点をあてたことを指摘しています。
     一方、オンタリオ州のケースでは、カナダ国立微生物学研究所のBSL-4施設の稼働開始が迫っていたという事情が指摘されています。


    (1)住民との合意形成に至った先行事例
     ある学術雑誌に掲載された論文より、カナダ国立微生物学研究所とテキサス大学医学部ガルベストン校の二箇所のBSL-4施設に関する合意形成事例の概要をまとめました。
    合意形成にかかった期間:6年ないし8年の期間を要しました。
    合意形成の方法と留意点:
    • 可能な限りの情報開示の実施可能な限り外部への情報開示を行い、見学会なども実施して透明性を確保しました。
    • 住民への情報伝達方法の工夫
      説明会の開催に際し、種々の開催方法や説明対象者を選び、継続的な対応を行いました。
    • 情報伝達に関わる研究者のトレーニング
      住民に説明を行う研究者など、担当者の情報伝達技能の上達を目的にトレーニングを行いました。
    • 情報共有化のための地域との連携体制構築
      地域の方々と率直な意見交換ができる素地を醸成し、その体制を維持・発展させることで、稼動に向けた準備を整えました。
    (2)住民との合意形成に支障を生じ設置が見送られた事例
     カナダのオンタリオ州保健局は、1976年にラッサ熱の疑い患者が発生したことを受け、1982年、オンタリオ衛生試験所の中にBSL-4施設を設置することを公表しました。この後、1994年11月までの間にその施設に関して報道等で取り上げられることはほとんどありませんでした。
    しかし、1994年11月にサル類のエボラ出血熱に関するテレビ番組の中で、オンタリオ衛生試験所に設置予定のBSL-4施設ではエボラ出血熱ウイルスをはじめとする治療方法がないウイルスが研究対象となることが放送されたことを契機に、地元で反対運動が起こりました。
     さらに、行政当局の公表内容が二転三転したほか、ウィニペグのBSL-4施設の稼働時期が迫るなどいくつかの事情が重なった結果、1995年6月、オンタリオ州保健局長は、オンタリオ衛生試験所におけるBSL-4施設設置計画の中止を発表しました。

    本件において指摘された失敗の原因:
    • 当初からのBSL-4施設に関する地域社会とのコミュニケーションの欠如。(地域社会への説明・情報開示の欠如)
    • そうした中での上記1994年11月のテレビ番組。
      それに引き続く反対運動、映画「アウトブレイク」の封切等。
    • 地域社会での大議論の中でのBSL-4施設の必要性に関する専門家間におけるコンセンサスの欠如。

    さらに、BSL-4施設の安全性に関する情報提供の失敗や消防等地域行政当局との情報共有の欠如。


    (参考)
     世界のBSL-4施設
  • 7-9. (1)海外のBSL-4施設での情報開示や地域と連携した施設運営体制の事例を説明してほしい。(2)長崎大学でもこのような取り組みを行うのですか?

     米国テキサス大学医学部ガルベストン校は、地域社会からの支持と参加を重視しました。長崎大学としても、こうした先行事例を参考として、地域と共生した運営体制を構築していく予定です。

    (1)海外での取り組みについて
     長崎大学としては、BSL-4施設については、地域の皆様と情報を共有するのみならず、地域の方々も交えた運営を図ることが重要であると考えております。
     そのため、引き続き海外の先行事例についての調査を進め、地域の皆様にご安心いただけるような仕組みづくりを実現したいと考えておりますが、現時点での先進事例として、米国テキサス大学医学部ガルベストン校のBSL-4施設(GNL)における地域との連携体制をご紹介します。
    GNLの運営においては、「地域社会からの支持と参加」が不可欠な要素とされており、以下の2つの組織が地域との連携を担っています。

    ①地域連絡協議会(CommunityLiaisonCommittee,CLC)
     地域連絡協議会は、ガルベストン群判事により指名され、テキサス大学により任命された地域市民により構成され(調査時9名)、定期的に開催されます。この協議会は、テキサス大学長に報告を行うとともに、GNL、大学、そして地域社会の間における情報共有に関する助言を行います。事務局は大学が務めるほか、会合には、学長、渉外担当副学長、その他の大学関係者が列席します。

    ②地域諮問委員会(CommunityAdvisoryBoard,CAB)
     地域諮問委員会は、歴史的に見るとCLCに先んじて設置されましたが、現在はCLCの活動を補完する組織として約60名のメンバーで構成され(CLCメンバーの一部を含む。)、テキサス大学における重要な成果に関する情報提供を受けるとともに、地域社会との情報共有について同大学を支援する役割を担っています。この委員会は、年に3~4回のペースで、朝食会の形で開催されています。


    (2)長崎大学での取り組みについて
     長崎大学は、地域との共生を前提とした発展を目指しており、BSL-4施設の設置運営に当たっても、地域住民のご理解とご支持の上で進めていきたいと考えています。
     こうした考え方の下、これまでに様々な形での説明会、質問会、市民公開講座の開催、ニューズレター「感染症とたたかう」の発行などを通して、地域の皆様に最新の感染症対策など、注意すべき情報を提供してきました。さらに海外の事例調査も進めてきました。
     これまで長崎大学が調査した事例では、例えば、ドイツ・ハンブルグの「ベルンハルト・ノホト熱帯医学研究所」では、地域住民が直接運営に関与するのではなく、地方政府の監督下で施設が運営されています。他方、米国テキサス州のテキサス大学医学部ガルベストン校のように、地域連絡協議会(CLC)、地域諮問委員会(CAB)など地域と連携した組織を設置している例もあります。
     これらの違いは、その都市を巡る環境、その研究機関が立地した事情などの要因によるものと考えられますが、今後、BSL-4施設設置計画の具体化に当たっては、その進捗状況をオープンにして、地域住民のご疑問やご不安、ご懸念の解消に努めるとともに、そのご意見を可能な限り取り入れる運営体制を構築していきたいと考えています。また、併せて、国際的な感染症の動向や気をつけるべき点などの情報を積極的に地域社会に提供することで、特に近隣住民の安全・安心の向上に努めていきたいと考えています。
  • 7-10. 長崎県および長崎市との関係について説明してほしい。

     長崎大学は、BSL-4施設の設置計画を具体化させるに先立ち、平成26年12月、長崎市民の民意を代表する長崎市議会、そして長崎県民の民意を代表する長崎県議会に対して、長崎大学における感染症研究拠点の早期整備を求めて請願・要望を提出し、いずれにおいても圧倒的なご支持をいただきました。
     これを受け、平成27年6月17日、長崎県知事、長崎市長、長崎大学長の間で「感染症研究拠点整備に関する基本協定」(以下「基本協定」と言う。)が締結されました。
     その後、長崎県、長崎市、長崎大学による「感染症研究拠点に関する連絡協議会」(三者連絡協議会)を設置し、協議を進めています。平成28年11月22日には、県と市からの3つの要請(①世界最高水準の安全性の実現、②地域との信頼関係の構築、③国と連携したチェック体制の構築)に、長崎大学長からしっかりと取り組むことを回答したことから、県知事、長崎市長が長崎大学の施設整備計画の事業化に協力することを合意していただいたこととなりました。
      (参考)
        長崎県、長崎市及び国立大学法人長崎大学との「感染症研究拠点整備に関する基本協定」の締結