2015年12月


熱帯病の研究を専門とするわが国唯一の研究教育機関である熱帯医学研究所。ここを拠点にアフリカや東南アジアなど現地での調査・研究が進められている。

熱帯病の研究を専門とするわが国唯一の研究教育機関

 長崎大学熱帯医学研究所(熱研)は、熱帯病の研究を専門とするわが国唯一の研究教育機関として、熱帯病をはじめとする熱帯地域の健康問題、特に感染症対策を中心に「地域社会への貢献」を目的に、研究と教育を行ってきました。

 熱研のルーツは、1942年(昭和17年)に開設された、長崎医科大学附属東亜風土病研究所にさかのぼります。終戦後の1946年に風土病研究所として再興し、1967年に長崎大学附置熱帯医学研究所と改称されました。同時に研究所の建物も増築され、活動の幅が広がりました。開設以来、熱帯医学を志す研究者や学生が、熱研を拠点として、熱帯医学の研究、教育、国際協力の各領域での事業を推進するため、日々努力してきました。

地域の社会的・経済的損失を防ぐ
これが熱帯医学の医療貢献

 熱研が対象としている熱帯病は、その地域に住む人々を苦しめている病気、主に感染症です。熱帯医学とは、その熱帯病の原因を突き止め、治療し、さらに予防法の研究を行う学問です。熱帯病によって健康を損なわれている人たちを治療し、健康を守る方法を考えることは重要な目的の一つです。

 しかし、熱帯医学には、もう一つ大切な目的があります。それは、熱帯病によって生じる地域の社会的、経済的損失を防ぎ最小限にとどめることです。

 そのためには、その地域の住民がどんな暮らしをしているのか、熱帯病によってどんな損失をこうむっているのかを、現地に滞在して研究し、そこで得た成果を現地に還元することが重要になります。

 熱研は、1964年に初めてアフリカに足を踏み入れて、医療活動とウイルス疾患の調査を開始しました。以来50年以上にわたり、ケニアを中心に東アフリカでの感染症の研究と現地の医療技術向上に貢献してきました。また、1969年にはフィリピンのマラリアの研究を開始し、その後も、調査・研究を継続しました。

ケニアに常駐型研究施設を設置
生活環境の問題解決に取り組む

 数十年にわたってアフリカやアジアの熱帯病を継続的に研究してきたとはいえ、実際には長崎の熱研を拠点に、長崎と現地を行き来して、調査・研究を行うのが実態でした。熱帯病の多くは、ウイルスや細菌、寄生虫などによる感染症ですが、なぜ感染するのか、感染源はどこか、感染経路はどうなっているのかを追究するためには、住民の生活習慣や風習、文化も知り、それがどういう影響を及ぼしているのかについても調べる必要があります。それには、現地に常駐し、住民の生活を見守ることが欠かせません。

 研究者のそうした思いは、2005年にケニアに設置された常駐型拠点として結実しました。現地の研究者とともに、熱帯病の背景となる社会的、経済的な問題も含めて、熱帯医学の研究が大きく進むことになりました。

 現在では、ケニアとベトナムに研究拠点を置き、マラリアや住血吸虫症、トリパノソーマ症、コレラ、デング熱、黄熱、小児の呼吸器感染症や下痢症などについて、現地の研究者と協力して幅広い研究を展開しています。また、それぞれの拠点の周辺の国々でも調査活動を行っています。



この内容は、感染症ニュース 第1号(2015年12月発行)に掲載しています。