熱研内科を率いる有吉紅也教授(中央。長崎大のケニア拠点にて)

国内での診療だけでなく熱帯地の医療活動にも全力

 長崎大学熱帯医学研究所には、唯一の臨床教室として「臨床感染症学分野」が置かれています。1967年に長崎大学病院に増設された熱帯医学研究所の診療科(現在の感染症内科)を担い、昔から「熱研内科」として知られています。

 私たちは日本で地域医療を実践しながら、アジアやアフリカなどの熱帯地でも医療ボランティア活動や研究を行い、グローバルに活躍できる臨床医を育成しています。超高齢化社会を迎えた日本でも、熱帯感染症で苦しむ世界の最貧国においても、目の前の患者さんの病気を治すことに一生懸命取り組むことをモットーとしており、同じ志をもった医師が全国から集まってきています。

英国、アフリカ、アジアで14年間
世界で通用する日本人医師育成目指す

 私は医大生のときにアフリカを訪れ、人々のあまりの貧しさに胸を衝かれ、お世話になった恩返しをしたいと考えました。日本で内科研修を終えたのちに、英国ロンドン大学で熱帯医学を勉強し、さらにアフリカ南部のジンバブエで臨床研修を続けました。

 現地の病院では、内科病棟のおよそ半分はエイズの患者さんが入院していました。当時はエイズ薬治療を受けられず、毎日のように若い患者さんが亡くなりました。そのことに衝撃を受け、臨床だけではなく研究も不可欠と痛感した私は英国に戻り、8年間、世界最先端の研究者たちにまじってエイズの臨床研究に没頭しました。英国医学研究評議会のスタッフとして、西アフリカに6年間派遣され、研究のみならず病院での診療やジャングルでの調査に従事した経験は、私の礎になっています。98年に帰国後、国立感染症研究所に勤務しましたが、その間も4年間タイに派遣されており、結局、14年間の海外生活を経て熱帯医学研究所に赴任しました。

 長崎大学の教授として私が目指しているのは、「世界で通用する日本人医師を育成すること」です。そのために、熱帯医学の世界最高峰に位置するロンドン大学と連携した新たな大学院教育の発展に尽力しています。今では毎年のように、国境なき医師団などの海外ボランティア医師を輩出しています。今年、西アフリカに派遣した熱研内科の医師がエボラ患者の新しい治療法につながる大発見に貢献したことがニュースになりました。アジアやアフリカの医療現場が抱える難題の解決に取り組んだ医師は、必ず、日本国内においても素晴らしい活躍ができると信じています。

他科の感染症診療にもアドバイス
難病の解明など研究でも成果

 私たちは、普段は長崎大学病院国際医療センターで感染症と呼吸器疾患を中心とする内科診療を行っています。一方で、患者さんの目には触れませんが、感染症コンサルタントとして、ほかの診療科に入院している患者さんが難しい感染症で困った際に、どのような治療を行うべきかを担当医にアドバイスする仕事も引き受けています。救命救急センターなど、さまざまな診療科から年間約500件もの相談があります。

 国内の臨床研究でも成果があがっています。大規模な全国成人肺炎調査を行い、日本の高齢者肺炎の現状を科学的に分析しています。また、極めて珍しい二つの難病の原因を世界で初めて解明しました。いずれも、診療現場で患者さんに一生懸命に向き合うことが出発点になっています。

 熱研内科はこれからも、国内でも海外でも高いレベルの診療と研究を続け、国境を越えてグローバルに活躍できる医師を育てていきます。



この内容は、感染症ニュース 第4号(2016年3月発行)に掲載しています。