感染制御教育センターの泉川公一教授

患者さんを院内感染から守る縁の下の力持ち

 長崎大学病院に「感染制御教育センター」があることをご存知ですか?私たちは患者さんが病院で安心して治療を受けられるよう、目に見えない活動を行っています。その活動の一端を紹介します。

手洗いの実践から抗菌薬の使い方まで
毎日の会議で院内の感染状況を確認

 感染制御教育センターのメンバーは、感染症や感染制御を専門とする医師が3人、「感染管理認定看護師」が2人、検査技師1人、薬剤師1人、事務職員1人です。センターは大きく3つの役割を担っています。まず、病院内での感染症の発生を抑えることです(感染制御)。そのための病院職員や学生一人ひとりへの教育が2つ目の役割。そして地域全体での感染対策を行うことです。

 院内の感染症では、特に「日和見感染症」に注目しています。一般の健康な方には、病気を起こなさいような弱い細菌や真菌(カビ)などが、病院に入院するような体力の弱った方に感染を起こすことがあります。大学病院には難しい治療をしている患者さんも多いため、特に気をつける必要があります。日ごろから、院内の環境を清潔に保ち、感染予防のために手を洗うなど、さまざまな注意が必要です。

 また、感染症の治療薬として、病院では様々な抗菌薬を使用しています。抗菌薬をたくさん使うと、薬の効きにくい薬剤耐性菌が出現する可能性も高くなります。従って、感染が疑われる患者さんには迅速に対処するだけでなく、抗菌薬を適正に使っていることをチェックし、病院内での薬剤耐性菌の発生が少なくなるように努めています。

 感染症は早期発見、早期治療が重要です。そのため、当センターでは毎朝会議を開き、院内の感染症患者さんに、どの抗菌薬をどのくらいの量で、どれくらいの期間使用するかなどを主治医の先生方と相談し、患者さんにとってベストな治療を行っています。入院患者さんから薬剤耐性菌が出てしまった場合は、患者さんを個室に移動するなどして、病院内で薬剤耐性菌が蔓延しないように対応しています。こうして、感染症の患者さんが早く治ることはもちろん、他の患者さんに悪い影響が出ないよう、毎日、注意を払っています。

新しい感染症の出現に備え
看護師らは毎週トレーニング

 センターの2つ目の役割が病院職員や学生の教育です。例えば、患者さんに接する前、接した後には必ず手を洗うことを習慣化するよう、定期的に教育しています。薬剤耐性菌が病院内で広がらないように、手袋やマスク、ガウンなどを着けることがありますが、どういうタイミングで、どう着けるかなどの教育も必要となります。

 ところで、長崎大学病院には、「第一種感染症病床」という、エボラウイルス病などのような、法律で「1類感染症」と呼ばれる、死亡率が高く、ヒトからヒトにうつる危険な感染症患者さん専用の病床があります。いつ、このような患者さんが出ても対処できるよう、トレーニングやシミュレーションを繰り返し行っており、これまでに、延べ200人以上の医療従事者が専門のトレーニングを受け、準備しています。

 長崎県にはクルーズ船の人気もあって海外からも多くの観光客がやってきます。さまざまな感染症が持ち込まれる可能性も高まっていますが、エボラウイルス病など致死率の高い感染症患者さんが発生しても、長崎大学病院ならいつでも受け入れられると自負しています。



この内容は、感染症ニュース 第5号(2016年4月発行)に掲載しています。