2016年9月


ギニア共和国でエボラウイルスの診断を支援する安田二朗教授

ウイルス感染症の迅速診断法開発で世界に貢献

エボラウイルスなどの病原体を
迅速・簡便・高感度に検出

 熱帯医学研究所・新興感染症学分野では、エボラウイルスやマールブルグウイルス、ラッサウイルスなど、重篤な感染症を引き起こすウイルスについて研究しています。「ウイルスはどうやって増えるのか」「どのように生き延びるのか」などを突き止め、人への感染やウイルスの増殖を防ぎ、ウイルスを制圧する方法を開発するためです。

 すでに大きな成果を上げているのが、体調を崩した人がどのようなウイルスに感染しているかを迅速かつ簡便、高感度で調べる検査法の開発です。病気の広がりを抑えるには、感染の有無を迅速に検査することが重要です。診断が早いほど、二次感染を防げるからです。実際、私たちが開発したエボラウイルスの迅速検査法は、ギニア共和国で導入され、高い評価を得ています。

 2013年末から約2年間、西アフリカを中心に大きな広がりを見せたエボラウイルス病の流行では、1万人以上の死者が出ました。私たちは2014年夏にエボラウイルスの検査試薬を開発し、東芝と共同で、検査・判定をわずか20分で行える検査システムを実用化しました。それまでの検査法では、判定に2時間以上かかっていましたから大幅な短縮です。その後、2015年3月にギニアで、ドンカ国立病院の協力を得てエボラウイルス感染者の検体を用いた実用性評価を実施。同時に、現地スタッフに検査キットを使うための技術指導をしました。

 今年7月には、ジカ熱に感染しているかどうかを、従来よりも短時間で確認できる新たな検査システムを開発し、ブラジルで実用性を確かめる検証試験を行いました。また、東芝メディカルシステムズ(本社:栃木県大田原市)と共同研究契約を結び、熱帯感染症や新興・再興感染症を対象とする新たな検査システムの開発に着手しました。

学生時代からウイルスを研究
分子レベルから解析し制圧へ

 私は、北海道大学の学生のときからこれまで、一貫してウイルスを研究してきました。学生時代はインフルエンザウイルスについて、米国のアラバマ大学バーミングハム校ではヒト免疫不全ウイルス(HIV)について研究し、東京大学医科学研究所に移ってからも、続けてHIVとエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)の病態の研究を続けました。その後、北大に戻ってからは出血熱ウイルスの一つであるエボラウイルスの研究に転じました。致死率が高いにもかかわらず研究者の数は世界的に少なく「ウイルス研究者として、少しでも多くの命を救いたい」との思いから研究に取り組み、今も研究を続けています。

 現在は、ナイジェリアにおけるラッサ熱の疫学調査や診断法の開発、感染から発症までの解析も大きなテーマとして取り組んでいます。ラッサ熱は毎年乾季(12月~翌年4月)になると感染者が増えますが、ナイジェリアでは近年、感染・発症のシーズンが7月まで延びることがあります。また、感染者の2割が重症化し、1~2%が死亡するとされていましたが、ナイジェリアでは重症者の半数が死亡しているのです。感染者の栄養状態、他のウイルスとの重複感染、ウイルスの強毒性への変異など、いろいろな要因が考えられます。ラッサ熱という感染症の実態を明らかにし、少しでも現地に貢献したいと思っています。



この内容は、感染症ニュース 第10号(2016年9月発行)に掲載しています。