2017年4月


南アフリカの国立伝染病研究所のBSL-4施設にて、共同研究者のMs.Nadia Stormと。

高病原性ウイルスの謎を解き、治療薬の開発へ

致死率の高いルジョウイルスの
仕組みを解明、治療法確立へ

 ウイルスの研究を始めて14年。昨年は、熱研同門会のベスト論文賞を受賞しました。テーマは「ルジョウイルスの粒子形成・出芽解析」です。

 ルジョウイルスは2008年に南アフリカ共和国で見つかった最新のBSL-4病原体です。これまでに感染した人は5人見つかり、4人が死亡しています。致死率は80%です。

 ルジョウイルスの研究を行うには、基礎研究を目的としたBSL-4施設が必要ですが、現在わが国には設置されていないため、まず感染性を奪ったルジョウイルスのような粒子を使って、分子生物学的な解析を行いました。そして、ルジョウイルスの粒子が形成される仕組みを解明し、続いて粒子の形成を阻害する化合物も発見しました。

 ただ、この化合物が実際にルジョウイルスに効果があるのかどうかは、BSL-4施設で検証する必要があります。そこで、共同研究を進めてきた南アフリカの国立伝染病研究所のBSL-4施設で研究を行うことにしました。そして、感染性を持つルジョウイルスに対しこの化合物が効果があることを確認することができました。

 この成果は、ウイルス学分野のトップジャーナルである『Journal of Virology』に発表しました。また、研究内容は米国CNNのニュースでも取り上げられました。

ウイルス研究のトップを目指す
10年後を見すえ人材育成にも力

 私は、北海道大学薬学部を卒業後、大学院の修士課程で当分野の安田二朗教授(当時は北大遺伝子病制御研究所)に出会い、それから一貫してウイルスの研究を続けてきました。2005年からの博士課程は、安田教授が移った科学警察研究所に出向する形で研究を続けました。テーマはテロ対策で、エボラウイルス、ラッサウイルス、マールブルグウイルスなどについて、ウイルスがヒトの細胞の中で何をしているかを解明することに取り組みました。その間に論文を4本発表し、知名度も上がったと自負しています。

 博士課程修了後は、米国留学を目指していました。いろいろな大学や研究所にアプローチし、最終的に九州大学の柳雄介先生の紹介で、米国・サンディエゴにあるスクリプス研究所に留学することができました。ここは世界最大の民間の非営利生物医学研究組織で、ノーベル賞受賞者も数多く輩出しています。ラッサウイルスの研究では世界トップの実績を誇っています。私はBSL-4病原体であるエボラウイルス、ラッサウイルスなど高病原性ウイルスの仕組みの解明に3年間取り組みました。そして留学を終え、2011年に安田教授のいる熱研に移り、引き続きBSL-4病原体の研究を続けています。

 ウイルスにはまだ謎が多く、興味は尽きません。今後はさらに範囲を広げ、ルジョウイルスに続いて、ほかの高病原性のウイルスが、なぜ病原性を持つのか、なぜ増えるのかを研究し、ウイルスの正体に迫りたいと考えています。

 そのためには、共同で研究を進めるチームが必要であり、その人材を育てることも私の重要な役割です。10年後を見すえて研究にも教育にも取り組んでいきます。



この内容は、感染症ニュース 第17号(2017年4月発行)に掲載しています。