2017年5月


熱帯医学研究所ウイルス学分野の早坂大輔准教授

ダニが媒介するウイルス感染症の予防に挑む

 今年5月までに、長崎県内では14名(そのうち5名死亡)の「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の患者が報告されています。この病気はマダニが媒介するウイルスによって発症します。SFTSは2013年に国内ではじめて報告された病気で、西日本を中心に230人以上の患者が確認されています。

獣医学部で出会ったマダニ媒介ウイルス
ロシアや北海道で調査・研究

 これまで私は、SFTSのような、マダニが媒介するウイルスの研究を行ってきました。私の、マダニ媒介ウイルスとの出会いは学生時代にさかのぼります。

 昨年7月、マダニが媒介するウイルスによる「ダニ媒介性脳炎」の患者が23年ぶりに北海道で報告されました。私は、23年前にその調査を行っていた北海道大学獣医学部の公衆衛生学教室(高島郁夫先生)に、卒業論文作成のために所属していました。

 その患者さんは当初、日本脳炎と考えられ、血清を長崎大学熱帯医学研究所(五十嵐章先生、森田公一先生)に送り検査したところ、それまで日本では報告のなかったダニ媒介性脳炎であることが判明しました。そこで、高島先生が現地で調査を行うことになったのです。

 私は牛や馬などの大動物の獣医になろうと思い獣医学部に進学したのですが、この時の調査を非常に面白く感じ、また、動物から人に感染する病気の研究に獣医が活躍していることを知り、研究者の道に興味を持ちました(当時はその後の苦労を知る由もありません)。

 その後、北大の大学院に進学し、日本のダニ媒介性脳炎ウイルスの起源を調べるために、ロシア(ハバロフスク、ウラジオストク、イルクーツクなど)に行き、山にこもってネズミとマダニを集め、ウイルスを見つけるという仕事を行いました(ロシアの山奥にいる間、食中毒で倒れるという苦労もありました)。

 大学院卒業後は、縁もあって長崎大学に就職し、ダニ媒介性脳炎ウイルスの研究を継続しています。

新しいマダニ媒介
ウイルスを発見

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 これまで、SFTSとダニ媒介性脳炎のウイルスを対象とした研究を行ってきましたが、長崎で採集したマダニから新しいウイルスを見つけました。このウイルスは、日本にはないクリミア・コンゴ出血熱という病気を起こすウイルスに似ているものでした。実験室のなかで調べたところ、このウイルスは哺乳類の細胞にも感染することがわかりました。ただし、このウイルスがヒトや動物に感染しているかどうかはわかっていません。今後の調査で明らかにしたいと思います。

 牛や馬などの大きい動物の獣医になるつもりが、今はウイルスというとても小さい微生物を扱うことになりましたが、研究仲間にも恵まれ、研究を楽しんでいます。
※ 写真は対馬でのマダニ採集のようす。防護服はアブにさされないようにするためです
  (注:本人ではありません)。




この内容は、感染症ニュース 第18号(2017年5月発行)に掲載しています。