2017年7月


院内感染の防止や抗微生物薬適正使用支援に注力する北原准教授

院内感染防止や小児の感染予防などに尽力

 長崎大学病院薬剤部には現在、66人の薬剤師がいます。患者さんにお渡しする薬の調剤だけでなく、病院内外で医薬品が適正に使われているかをチェックしたり、薬を最適に使用する研究をしたり、薬学部や医学部の学生を教育したりと、薬に関するさまざまな活動を行っています。

 私は長崎大学薬学部を卒業後、製薬会社で抗菌薬の開発に携り、学位論文では薬剤耐性菌であるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を退治する薬の研究を行うなど、感染症や抗菌薬に関わってきました。大学病院でも、感染制御専門薬剤師として感染予防に力を注いでいます。

手指消毒薬の効果を科学的に分析
抗菌薬の適正使用などにも助言

 長崎大学病院には、院内感染防止の活動を行っている感染制御教育センターがあります。私は、同センターが中心となって活動している感染制御チーム(ICT)の一員でした。活動の一つとして、手指消毒剤の効果を科学的に調べて、適切で使いやすい消毒剤を選ぶ研究を行いました。

 私達が研究を開始した2009年ごろまでは、大学病院でも液体のアルコール消毒剤を使っていました。しかし、手に取った際に液垂れすることから、当時販売が始まったゲル剤について、消毒後の手指に残った細菌の量を比較しました。その結果、ゲル剤も同等の消毒効果があると分かったのですが、ゲル剤だと、手をこすり合わせたあとに澱(おり)が出るといった問題が出ました。その後、泡状の消毒剤が販売された際に、同様の実験を行ったところ、同等の効果があり、手荒れなどの問題もないことから2011年から泡状の消毒剤に切り替えました。病棟を回って、各種消毒剤が現場できちんと使われているかどうかをチェックすることもICTの薬剤師の仕事です。患者さんの目にはあまり触れませんが、感染予防のための地道な活動や研究は今も続いています。

 抗菌薬が適正に使われているかどうかをチェックし、患者さんにアドバイスすることも薬剤師の重要な役割です。感染している、あるいは感染が疑われる入院患者さんについて、有効な薬が使われているか、適切な量か、適切な投与期間か─などを、ICTの医師や看護師らと検討し、問題点が見つかれば、主治医と相談して処方の切り替えの提案なども行います。

日々成長する子どもの体に応じた
抗菌薬の投与量についても研究

 私は、薬学部治療薬剤学研究室での研究も行っています。今、特に力を入れているテーマは、子どもへの抗ウイルス薬の投与量です。

 小児に抗菌薬や抗ウイルス薬を投与する場合、年齢や体格だけでなく、発達・成長の様子を見極めて投与量を決めることが、副作用を抑えつつ、効果を最大限にするために欠かせません。さらに、重い病気を抱えるお子さんの場合、成長する過程で、体の成長だけでなく、病気の状態、腎臓や肝臓の働き具合なども日々変化します。その変化をきめ細かく把握し、薬が体の中でどう働くかを考えて最適な投与量を決める必要があり、医学部小児科と共同で研究を進めています。

 入院患者さんが、病院で感染症にかからないよう、万一なっても少しでも症状が軽く、早く回復するよう、これからも貢献したいと思います。



この内容は、感染症ニュース 第20号(2017年7月発行)に掲載しています。