2017年9月


医歯薬学総合研究科 呼吸器内科の迎寛教授

肺結核をはじめ呼吸器感染症の診療・研究に取り組む

 私は1985年に長崎大学医学部を卒業し、第二内科に入局。ここで呼吸器内科医の道に進みました。最初は「びまん性肺疾患」という病気を中心に診療と研究を行いましたが、抗菌薬で治癒する感染症にも興味を持ち、現在では呼吸器の病気全般の診療と研究、そして教育を行っています。

全国平均を上回る長崎の結核罹患率
咳や熱が続くときは早めの受診を

 呼吸器感染症のなかで、長崎県での問題の一つと考えているのが結核です。わが国では、結核は過去の病気と思われがちです。しかし、人口10万人当たりの患者数(罹患率)は、先進国の中では飛び抜けて高い状態が続いています。欧米では罹患率6人以下がほとんどですが、わが国の2015年の罹患率は14.4人です。東京や大阪などの大都市で罹患率が高く、また西日本で高い傾向にあります。

 結核が多い状況が続く最大の理由は、高齢者の増加です。例えば、1950年代は1年間に人口の約3%が結核に感染していました。20歳までに、約半数が結核に感染していたのです。ただ、感染はするものの、ほとんどは発病せず、感染したことさえ自覚していません。体のなかの結核菌が消えないまま、50年後に若者が70歳代となり、免疫力が低下して発病しているわけです。

 長崎県の罹患率は、全国平均より数人以上多い状況が15年以上続いています。2015年は15.7人でしたが、前年まで20人前後だったので、引き続き注意が必要です。

 結核の罹患率が高い理由としては、医療機関の受診が遅れたために治療開始が遅れたというものもあります。高齢者で咳や発熱が2週間以上続く場合は、必ず医療機関を受診してください。結核は、処方された薬をきちんと飲めば治る病気です。周囲の人にうつさないために、治るまで薬を飲み続けましょう。

 最近では、IGRA検査という検査法によって、結核菌を持っていても発病していない人を見つけられるようになりました。発病する前に治療することも可能になっていますので、周囲に結核になった人がいる場合には、自分が感染しているかどうかを確認するために、この検査を受けることをお勧めします。

抗菌薬で重症の病気が治ることに驚き
そのメカニズムの解明を進める

 私が呼吸器感染症に興味を抱いたきっかけは、「びまん性汎細気管支炎」という病気の患者さんに「マクロライド」という抗菌薬を少量だけ長期に投与すると完治することを目の当たりにしたからです。びまん性汎細気管支炎は、細い気管支に慢性の炎症が起こり、せきやたんが出たり、息苦しくなる病気で、5年生存率は4割程度といわれていました。それが、抗菌薬で劇的に改善したのです。

 以来、呼吸器感染症の診療と研究を続けてきました。結核についての研究は、長大の前に6年半在籍していた産業医科大学で本格的に始めました。北九州市も結核罹患率の高い都市で、何とかして結核の感染を防ぎたいと考えたからです。

 一方、マクロライドが、なぜ感染症ではないびまん性汎細気管支炎に効くのかというメカニズムの解明も進めてきました。するとマクロライドには炎症を抑える作用があることが分かってきまこの抗炎症作用を念頭に置いた、新しいした。感染症治療を展開したいと考えています。



この内容は、感染症ニュース 第22号(2017年9月発行)に掲載しています。