2017年12月


2016年の「国際Prion2016」で優秀賞を受賞した佐藤克也教授

プリオン病早期発見の技術を長崎から世界へ発信

 「プリオン病」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。これは、体の中でつくられる「正常型プリオン蛋白」が異常化して、感染性のある「異常プリオン蛋白」となって、脳に蓄積され、発症する難病です。発症するのは人口100万人当たり1人程度とされ、大半が60歳代で発症し、1~2年で全身衰弱などによって死亡するだけに、早期診断と早期治療が求められています。

 わが国では年間約200人が亡くなっています。日本でプリオン病が注目を集めるようになったきっかけは、2001年に千葉県で初めてBSE(牛海綿状脳症)の牛が発生したことでした。いわゆる狂牛病問題です。その原因とされたのが異常プリオンです。2005年1月には、わが国初のプリオン病患者が発見され、社会的な話題となりました。

病気が急速に進むケースを早期診断
全国から疑い例の検査を受け入れ

 私は20年近くプリオン病の研究を続けています。実は病気の原因とされるプリオンの正体はよくわかっていません。そこで、プリオンが何者かを解明するのと同時に、プリオン病の診断と治療方法を模索してきました。

 2007年からは、厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業の「プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班」と、「クロイツフェルト・ヤコブ病サーベイランス委員会」に加わり、プリオン病の早期診断法の開発に取り組みました。

 当時、プリオン病患者さんの脳脊髄液を用いた検討では、すでに、いくつかの診断マーカーが報告されていました。その中でも、わが国で最も多い、原因不明の「孤発性プリオン病」では「14-3-3蛋白」の報告が最も多く、私はこの蛋白による早期診断の手法開発と検査法の標準化を進めました。

 そして2011年には、急速に症状が進むプリオン病を早期診断で確定できる検査方法を、世界に先駆けて確立し、「RT-QUIC法」と名付けました。これは、脳脊髄液を振動させて細かい泡を立て、その後しばらく静かに放置し、再び振動させては静かに置くという過程を繰り返し、微量の異常プリオン蛋白を検出する方法です。

世界各地の研究者と連携し共同研究
治療への道を切り開きたい

 現在、私の研究室は、わが国唯一のプリオン病の骨髄液検査センターの役割を担っており、全国から年間約500検体(脳脊髄液)が送られてきます。多いときには1週間に20検体も来ることがあり、朝から晩までずっと検査に追われることもありますが、プリオン病の早期発見につながればと思い、懸命に対応しています。

 髄液検査の精度と早さをさらに高めるために、英国、ドイツ、米国、アジアの研究者と共同研究を行っています。プリオン病の診断には画像検査もあり、この研究も進めています。画像検査については徳島大学、岩手医科大学、東京医科歯科大学と多施設共同研究を行っています。

 早期診断が可能になれば、治療法の開発への期待も膨らみます。現在、プリオン病の治療薬のスクリーニングを、医歯薬学総合研究科感染分子解析学の西田教行教授らとともに進めており、治療薬も長崎から世界に送り出したいと努力しています。



この内容は、感染症ニュース 第24号(2017年12月発行)に掲載しています。