2018年4月


薬剤耐性菌の感染の実態を解明し、早期の診断法と治療法の開発を進める栁原教授。

薬剤耐性菌を減らす対策と新しい治療法を同時に研究

 私は、医学部では病態解析・診断学分野(臨床検査医学)の教授を務め、大学病院では検査部長を務めています。大学院では薬剤耐性菌の感染対策の研究などを進めており、検査部では検査データを正確かつ迅速に提供しつつ、個別化診療に対応するために遺伝子の研究なども進めています。

 一方、私は厚生労働省の「医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究」の代表を務め、さらに国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「薬剤耐性菌対策に資する診断法・治療法等の開発研究」の班長を務めています。まず、この2つの研究について説明します。

耐性菌への感染の実態が明らかに
新しい診断法・治療法の開発も進める

 薬剤耐性菌は、本来なら抗菌薬が効くはずなのに、それが効かなくなってしまった病原菌です。高齢者や小さな子どものように抵抗力の低い人が感染すると、症状が重くなったり命に関わったりする危険な病原体です。代表的な耐性菌は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)などです。医療機関ではこうした耐性菌のアウトブレイク(集団発生)が散見され、耐性菌の院内感染防止の重要性が長年指摘されてきました。しかし、耐性菌が医療機関でどのくらい検出されているのか、どう対応しているのかといった実態は、よく分かっていませんでした。

 そこで、厚労省の研究班では、全国の医療機関で検出された耐性菌を集めることから始めました。全部で991株の耐性菌が集まり、その解析を進めています。同時に、抗菌薬の使い方や耐性菌の感染予防対策の現状についてアンケート調査したところ、医療機関によって考え方や取り組みに大きな違いがあることが分かりました。また、一般市民を対象としたインターネットでの意識調査では、「風邪やインフルエンザに抗生物質は効果的だ」といった誤った認識を持っている人が約4割いました。これらの結果を踏まえ、耐性菌と抗菌薬使用、感染予防との関連を明らかにしたいと考えています。研究結果を国民に向けて発信し、感染症や抗菌薬の正しい知識を普及させることも計画しています。

 AMEDの研究では、感染症の原因となる病原菌、特に耐性菌を迅速かつ正確に突き止める新しい診断法の開発を進めています。抗菌薬が耐性菌に壊されることでごくわずかに変わった分子の重さを測ったり遺伝子解析したりするなど、最新の技術を応用します。2050年には、耐性菌によって世界で年間1000万人が死亡するとの推計もあり、耐性菌に対する治療薬の開発も進めていきます。

長大病院は臨床検査の国際規格を取得
国際共同治験への参画が可能に

 長崎大学病院の検査部は細胞療法部とともに、昨年3月に、国際標準化機構(ISO)が定めた臨床検査室の国際規格「ISO15189」を取得しました。安定した質の高い臨床検査が世界的に認められたということです。この規格は数年ごとに更新するもので、今後も日々の臨床検査の質を高める努力を続け、患者さんに貢献したいと思います。

 さらに、国際水準の検査技術・品質が認められたことにより、例えば新しい感染症治療薬の開発に当たっては、最初から国際共同治験に参画できるようになりました。海外では臨床応用されている薬が、わが国では使えない、いわゆる「ドラッグラグ」の解消にも繋がると期待しています。



この内容は、感染症ニュース 第27号(2018年3・4月発行)に掲載しています。