2018年5月


2018年4月より感染症内科(病棟・外来)勤務に変更となった高橋健介助教

「海外旅行外来」で、海外へ出掛ける人を感染症から守る

 長崎大学病院の3階に「海外旅行外来」という専門外来があることをご存知でしょうか?私は、そこで毎週木曜日の午後、「これから海外に出掛ける人」の健康相談に応じたり、予防接種をしたりして、海外でも健康で安心して過ごすサポートをしています。

国内にない病気から身を守る健康相談
ワクチン接種で感染症の発症を予防

 海外旅行外来の目的は、海外への旅行や出張、転勤、永住などを予定している人の健康管理です。主な内容は、海外渡航に関連する健康相談、予防接種、マラリア予防の薬の処方などです。年間約150人が受診しています。ただ、わが国では年間約1600万人が海外に渡航しているのに、当科のような旅行外来(あるいは渡航外来)の名前や仕事の内容は、残念ながらあまり知られていません。

 海外に渡航する人の行き先の約25%が東南アジアなどの熱帯地です。熱帯地にはその地域に特有の感染症が流行している可能性があります。そういう地域に行く人が感染症にかからないように健康管理のアドバイスをすることが、海外旅行外来の大きな仕事の一つです。

 例えば2010年には、日本人も多く訪れるインドネシアのバリ島で82人の狂犬病の患者が発生しました。狂犬病は感染した動物に噛まれて感染し、発症すると死んでしまう病気ですが、噛まれてすぐに5回のワクチン接種を開始すれば、命を取り留めることができます。狂犬病は多くの国で流行しており、流行がないのは日本や英国、オーストラリア、ニュージーランドなど数えるほどです。ですから、海外に出かける人には、①犬などの動物に近寄らない、②噛まれたらすぐに現地でワクチン接種を受ける─などのアドバイスをしています。

 ほかにも、感染症にかかるリスクの高い行動があります。まず食事と水です。アジアやアフリカでは日本のように衛生環境が良い国は少ないので、食べ物はしっかり火を通したものを食べる、生水は飲まない、氷にも気を付けることが大切です。蚊やダニ、シラミなどの節足動物が媒介する感染症もまん延しており、虫よけの使用を勧めます。マラリアがまん延している地域に行く人には、薬を飲んでもらっています。

高齢者の長期旅行は十分な備えを
高血圧など持病の治療継続も支援

 高齢者の長期の海外旅行も増えてきました。ペルーのマチュピチュなどの高地では高山病のリスクが高くなるだけでなく、高血圧や糖尿病などの持病がある人は、その間もきちんと薬を飲み続ける必要があります。旅行外来では、英文の診断書を作成し、薬が足りなくなったときなどに現地で処方してもらえるようにしています。

 私は、今年3月まで、熱研外来(海外旅行外来を含む)の担当日以外は、救命救急センターに勤務していました。途上国で何らかの貢献をしたいという思いで、私は医師になりました。世界のどこでも役に立てるために、大学卒業後は救急対応ができるよう循環器科で研修を受け、その後、長大の熱帯医学研究所に勤務し、ベトナムやエチオピアでも診療の経験を積みました。

 現地で実感したのは、感染症が大きな問題になっていること、それらの地域でまん延している感染症に日本人は弱いということです。そうした地域に出かける人が健康に不安を感じることなく、旅行を楽しんだり、仕事に励んだりすることを今後も支えたいと思います。



この内容は、感染症ニュース 第28号(2018年5月発行)に掲載しています。