4.トランスポゾンとエイズウイルス (HIV)
ヒトゲノムの約45%は転移因子トランスポゾンが占めている。LINE-1 (L1)は最もメジャーなトランスポゾンで、ヒトゲノムの約17%占めているが、その生理機能は不明である。逆転写酵素を保持し、ヒトゲノムにインテグレーションされる遺伝因子をレトロエレメントと称する。レトロエレメントは、LINE-1をはじめ、HIVなどのレトロウイルスやB型肝炎ウイルス (HBV)に分類される。当研究分野では、このようなレトロエレメントに関する研究も行なっている。LINE-1が異常にヒトゲノム内を転移すると、がんや遺伝病のリスクが高まる。HIVがヒトゲノムにインテグレーションされるとAIDSを発症する。レトロエレメントはヒトゲノムを維持する上で危険因子となり、ヒトにはこれらレトロエレメントからヒトゲノムを守る守護神のような防御機構を進化させている。当研究分野では、レトロエレメントと宿主の攻防をRestriction Factorにフォーカスを当てて研究を行っている。これまで、DNA修復因子Rad18がLINE-1のヒトゲノムへのレトロトランスポジション能を抑制すること、HIV-1インテグラーゼに結合因子Rad18がHIV-1感染を抑制することを見出している。また、エボラウイルスなど、RNAウイルス感染と内在性レトロトランスポゾンとの関係についても研究を進めている。